Exhibition

#118 山水郷のデザイン3 - 地域の価値の耕し方と伝え方 2023年7月14日(金) - 8月13日(日) 11:00-20:00 会期中無休・入場無料 | How to cultivate and communicate local values; Three cases of Sansuigo / 14th July - 13th August 2023 11:00-20:00 Admission Free

「山水郷」は、”山水”の恵みと人のつながりから、豊かな営みが生まれている”郷(さと)”を意味する造語です。
日本各地の山水郷で、仲間と共にその土地でしかできない仕事や生き方を愉しみながら創る、そんなデザイナーたちが日本を変えはじめています。
日本デザイン振興会/GOOD DESIGN Marunouchiがコロナ禍の2020年5月から配信を開始した「山水郷チャンネル」は、これまで日本のさまざまな地域でデザインに取り組む80名に及ぶデザイナーをゲストに招き、その生き方や地域風土に根ざした活動を紹介してきました。

この「山水郷のデザイン」展は、当事者である地域でデザインに取り組むデザイナーの目線、思考、そして言葉により、自身の活動を展示として立体的に表現いただく展覧会です。
3回目となる今年は、地域の風土、自身のバックグラウンドや考え方、さらに地域をデザインする手法に焦点をあて、TRUNK DESIGN(兵庫県神戸市)、イカハッチンプロダクション(滋賀県長浜市)、吉野敏充デザイン事務所(山形県新庄市)の3組による展示を行います。

■ 展示内容

展示1:TRUNK DESIGN「ローカルからグローバルへ:地域文化を編集し世界へとつなぐ」
Editor: 堀内 康広(TRUNK DESIGN)
神戸市垂水区にオフィス&ショップを構え、プロデュースからブランディングまで幅広くデザインを手がける。2011年には兵庫県のモノづくりを紹介する「Hyogo craft」を立ち上げ、商品開発から流通支援、海外展開を一貫して支援。近年は兵庫県にとどまらず日本全国のものづくりの支援を行い、自らが起点となりヒト・モノ・コトを結びつけ、新しい価値を創造するセルフプロジェクトも手がけている。
https://trunkdesign-web.com/

展示2:イカハッチンプロダクション「サバイブユートピア ようこそわたしたちのユートピアへ。」
Editor: イカハッチンプロダクション(船崎 桜/ワタナベユカリ/對馬 佳菜子/浅井 千穂/松浦 すみれ/MUTSUMI/荒井 恵梨子/堀江 昌史)
滋賀県長浜市(旧伊香郡)に縁あって移住した職種も趣味嗜好もバラバラな8人の女性たちが結成した「イカハッチンプロダクション」。年に一度、「田舎(ユートピア)に移住したオンナたちの日常(サバイブ)」を合言葉に雑誌「サバイブユートピア」を発行している。本展では「サバイブユートピア」と、2023年3月3日に発刊した2冊目の特集、”嫁”の内容の一部を展示化。これまで移住者と見なされてこなかった”嫁”たちが、地域のなかで代々引き継いできたものをリスペクトをもって紹介する。
https://ikahacchin.base.shop

展示3:吉野敏充デザイン事務所「土に叫ぶ」
Editor:吉野敏充(吉野敏充デザイン事務所)
東京でグラフィックデザイナーとして会社経営にも携わったあと、山形県新庄市に帰郷。 地元産農作物などの販売を行うマルシェ、山形県新庄・最上地域広域季刊誌の制作・発行、山形県の工芸品のリデザイン・販路支援プロジェクトの運営など、地域資源を活用したプロジェクトを手掛ける。展示では帰郷して出会った人、一緒に作ったもの、動かしているプロジェクトを通して、この地域の歴史や風土に培われた「豊かさ」を叫ぶ。
https://toshimitsuyoshino.jp

ディレクター:井上 岳一(株式会社 日本総合研究所 エクスパート)、藤崎 圭一郎(東京藝術大学教授・デザイン評論家)
展示協力:イカハッチンプロダクション・トランクデザイン株式会社・吉野敏充デザイン事務所
会場デザイン:MINGLE DESIGN OFFICE
施 工:株式会社デエク
主 催:公益財団法人日本デザイン振興会

■ オープニングトーク

会期初日に「山水郷のデザイン3」の出展デザイナー3組と、本展ディレクターの井上岳一・藤崎圭一郎両氏による対面および配信によるオープニングトークを実施します。トーク後には交流会も行います。
日 時:7月14日(金) 19:30 - 21:00
会 場:リファレンス新有楽町ビル Y205 (東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル2F)
ゲスト:堀内 康広氏(TRUNK DESIGN)/イカハッチンプロダクション(ワタナベユカリ氏・松浦 すみれ氏 予定)/吉野 敏充氏(吉野敏充デザイン事務所) モデレーター:井上 岳一氏/藤崎 圭一郎氏
詳細・申込:http://ptix.at/DZuk0s

■ ディレクターズメッセージ

どんな人にも固有の価値があるように、どんな地域にも固有の価値があります。しかし、その価値を認識するのはなかなかに難しいものです。事実、地方の町や村に行くと「ここには何もない」と言う方が少なからずいらっしゃいます。価値が認識されていないのです。
そんな「何もない」と言われる地域の価値を捉え直すため、拙著『日本列島回復論』では、「山水郷」という言葉を使いました。田舎と一括りにされる地域に豊かに存する山水の恵みと人のつながり、郷の暮らしの手業や文化にこそ、地域の価値があり、次の時代につながる可能性があるということを表現したかったからです。
「地域の価値の耕し方と伝え方」を副題とする今回の「山水郷のデザイン」展。展示をお願いした3組は、それぞれの方法で地域の価値の捉え直しに挑戦されています。地域の価値を耕し、育て、伝える三者三様の展示をお楽しみください。

井上 岳一
日本総合研究所創発戦略センター エクスパート / 武蔵野美術大学客員研究員

「山水郷のデザイン」展は今回で3回目になります。前回に引き続き、それぞれの地域の特性に真摯に向き合いながら、そこにしかない価値を引き出し育てる活動をしている3組に出展をお願いしています。本展ディレクターはこの3組を選び、3組の会場での配置を決めて、オンラインで企画主旨を説明する程度で、それぞれの展示内容は、3組の出展者に自由に考えてもらっています。一度オンラインで3組の方向性を共有し合う会議をしましたが、展示の詳細が、私たちディレクターに開陳されるのは搬入日になるはずです。
ただこの組み合わせは絶対に面白くなるという確信はあります。分析を重視しグローバルにローカルプロダクトを展開する Trunk Designの堀内康広さん、人間の性(さが)と業(ごう)が生み出してきた民俗という視座から過去と現在をデザインで繋げる吉野敏充さん、8名の女性たちが立ち上がり、見過ごされたり抑圧されがちだった地域文化を支える女性のクリエイティビティの可能性を世に問うイカハッチンプロダクション。つまり、グローカル・民俗・ジェンダーという3つの視点で選んだ3組。細部までゆっくりご高覧ください。

藤崎 圭一郎    東京藝術大学美術学部デザイン科教授

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